16年の終止符

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私はブランコを漕いでいた足を止め、 「お兄ちゃん、今幸せ?」 と聞いた。 「何だよ、急に」 と笑うお兄ちゃんに、 「幸せ?」ともう一度聞いた。 何でこんなこと聞いたのか、自分でもよくわからない。 でも、確かめずにはいられなかった。 笑って答えをはぐらかそうとしていたお兄ちゃんは、自分を見つめる真っ直ぐな視線に気付くと観念したように、 「あぁ、幸せだよ」 と答えた。 「本当に?」 「本当」 そう答えたお兄ちゃんの顔は真剣そのものだった。 「…そっか、良かった」 私はお兄ちゃんから顔を背けた。 肩が震える。 「まひる、どした?」 と聞くお兄ちゃんに、私は答えられない。 ただならぬ様子に、お兄ちゃんは私の正面に来てしゃがみ込み、顔を覗き込んだ。 「お前、泣いてんのか」 「…泣いてない」 顔を下に向けたまま視線だけを前に向けると、お兄ちゃんが心配そうに眉をひそめている。 「どうしたんだよ…。」 そんな困った顔、見せないでよ…。 「…嬉しいんだよ」 「え?」 「だから、嬉しいの…。小さい頃から、家族みたいに一緒に育ってきたお兄ちゃんが…あんなに素敵な奥さんもらってさ…嬉しくないわけないじゃん。私は…妹なんだから。」 私は顔を上げ、無理やり笑った。 そうでもしないと、ごまかせない気がした。 ほんとはこんなぐしゃぐしゃな顔、見せたくなかったけれど。 引きつった笑みを浮かべながらも、涙が溢れ出て止まらない私に、 「そんなことで泣くなよ〜」 と言って、お兄ちゃんは笑った。 「でもありがとな、まひる」 そう言ってお兄ちゃんは私の頭に手を置き、 「お前も幸せになれよ」 と満面の笑みを浮かべ、髪をくしゃくしゃにした。 「やめてよ、犬じゃないんだから…」 言いたくても言えない。 だから、心の中で強く思う。 好きだったよ、わたるお兄ちゃん。 「また何かあったらいつでも俺に言えよ」 「…うん」 本当はわかってた。 もうそんなこと、出来ないんだって。 お兄ちゃんの前で泣くのも、 もうこれが最後だよ。
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