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絵見と別れ、太賀くんと帰路についた。
「盛り上がったねー、カラオケ。」
と言う私に
「そうだな。」
と言って苦笑する太賀くん。
「何か、ごめんね。一人で飲みに来てたのに邪魔しちゃって」
「いや、一人になりたかったら家で飲めば良かった話だし。わざわざ店まで飲みに来たりしてほんとは俺、一人になりたくなかったのかもな。」
何を話せば良いかもわからず、
ただ黙って足を進めていると
「一目惚れだったんだ」
と、太賀くんが沈黙を破った。
「えっと…みさきさん、だったっけ?」
太賀くんが頷く。
「初めて会ったのは、大学4年の時。みさきは、兄貴の彼女だったんだ。」
「…えっ?! 」
それって略奪愛ってこと…?
私の考えていることを見透かすように
「…引いた?」
と苦笑交じりに聞いてくる太賀くんに、
「え…っと、いやなんか、太賀くんが…意外だなと思って。」
と、しどろもどろになってしまう。
束の間の沈黙の後、太賀くんが続けた。
「祭で坂下たちと会った時、あいつすごい無愛想だったろ? 俺と最初に会った時もあんな感じでさ、兄貴とは楽しそうに話すのに、俺には全く愛想のひとつもなくて、」
私はただ、
「うん」とだけ答えた。
「…でも、そこが良かったっていうか。誰にでも愛想振りまける人もいるけど、そうじゃなくて。不器用に生きてる感じが、俺には可愛く見えたんだよな」
「…うん」
「そっからよく3人で遊ぶようになった。みさきと俺はタメで、お互いに就活も終わって自由な時間が増えると、いつからか兄貴抜きで遊ぶことの方が多くなってった」
「…うん」
「みさきはこっちの大学通うために一人暮らししてたけど、卒業後は地元の企業に就職して実家に戻ったんだ。距離が離れたせいで、社会人になってからは中々会えなくなった。兄貴もそれは同じで、2人の関係にも距離ができ始めてさ、」
「…うん」
「そのタイミングで俺、あいつに告白したんだ。みさきはそれを受け入れた。世に言う二股ってやつだけど、その時はもう兄貴と別れるのも時間の問題だった。結局2人は別れて、兄貴から奪う形にはなったけど、俺たちはちゃんと彼氏彼女として付き合うことになった。」
「…」
「まぁ、だから…あいつが誰かに奪われても、俺が文句言える立場じゃないよな。」
「…」
「…おい。さっきから黙ってないで、なんか言えよ」
と笑いながら、太賀くんが拳で軽く小突いてくる。
「えっと…お兄さんとは、気まずくないの?」
場違いな質問かもしれないけど、私は先にそこが気になってしまった。
「ん? あぁ…。みさきと付き合ってるって言ったときはビックリしてたし、兄貴の女によく手出せるなって言われたけど、今は普通。許してはないだろうけど…一応家族だし、切っても切れない仲だからな。俺が逆のことされたら絶交かもしれないけど。」
「絶交って…。そんな言葉、久しぶりに聞いたよ」
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