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今日はいつもより、帰り道が長く感じた。
「まぁ、他人から奪って勝ち取った恋は、誰かに奪われて終わるってことだよね、勉強になるわ。」
何て言葉を続けたら良いか迷った末、私はつい憎まれ口を叩いてしまう。
「…お前って、時々意地悪なこと言うよな」
太賀くんが苦笑する。
「でも…」
「ん?」
「どんな形で手に入れた恋だとしても、無くすのは誰だって辛いよ。私は手に入れてさえもいないけど、その気持ちはわかってあげられる気がする。」
と言った私を、太賀くんが黙ったまま見つめる。
もっともらしいことを言って、急に恥ずかしくなった私は、太賀くんから顔を背ける。
そのとき、ある突拍子もない考えが頭をよぎった。
その考えを幾度か反芻して、すぐに打ち消す。
ないない…。
でも、
いつか太賀くんが言っていた。
“好きだった人を忘れるのとかって、時間が解決してくれるとは思えないな”
“ただ時間に流されるよりも次の恋に進んだ方がいいと思うよ”
だったら…
「太賀くん」
「ん?」
急に立ち止まった私を、太賀くんは振り返り見る。
「あのさ、こんなこと言ったらビックリさせちゃうかもしれないけど…。ていうか、引くかも。」
「何だよ」
と言って笑う太賀くんに、心臓が高鳴っていく。
こんな大胆な提案をしようとするなんて、
これもやっぱりお酒のせいなんだろうか…。
「あのね、太賀くん…」
「私と、付き合わない?」
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