クレイジーな告白

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机の上に置き去りにしていたスマホの画面を見ると、 1件の不在着信があった。 確認すると、太賀くんの番号からだった。 慌てて電話をかけ直すと、 すぐに太賀くんが出た。 「もしもし?」 「もしもし…坂下です」 「知ってる」 と言って、太賀くんが笑う。 「連絡するの遅くなってごめん、帰ってから今まで爆睡だった。」 「こっちこそ電話出れなくてごめん。…逆に私は早くに目が覚めちゃった。」 そっか、と太賀くんは笑い、 「で、昨日のことだけど」 と、本題を切り出す。 鼓動が加速する。 “やっぱり昨日のはなかったことに。” “お互い本気じゃなかったよな?” そんな言葉が続くと覚悟していた。 「昨日、俺に言ったことに後悔はないな?」 へ…? 予想外の言葉に反応できず、一瞬間が空く。 「えっと…ないです。」 そう言い切った私に、 「俺も、自分の言ったことに後悔はない。」 と太賀くんも断言した。 「じゃあ私達、付き合ってる…てことでいいのかな?」 「そういうことだな」 「そ…そっか」 事務的な確認に、今更ながら笑いが込み上げてくる。 「じゃあ…また連絡する」 と言って太賀くんが電話を切った。 私は、電話が切れた後も しばらくスマホを手に握りしめたまま 呆然としていた。 あまりに呆気ないやり取りに 恋人ができたという実感はまるでない。 嬉しい? よくわからない。 けど、 私はベッドに転がり、 クッションを抱いて足をバタバタとした。 緊張が一気に解け、 高揚感だけが残る。 こうして私たちは、 お互いに失恋の傷を抱えながらも 正式に付き合うこととなった。
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