16年の終止符

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16年の終止符

気付くと朝、ではなく昼だった。 昨日“深夜の映画鑑賞会”を始める前に、ベッドで横になりながらスマホをいじっていたらそのまま寝落ちしてしまったらしい。 “我ながらよくそんなに眠れたもんだ”と思いながら起き上がって階下へ降りると、洗面所に向かう途中で母に呼び止められた。 「何?」とだるそうに聞くと、 「今日ね、恵子さんから夜ご飯うちでどう?って誘われてるんだけど、あんたも行くでしょ。わたるくんも今日日帰りで帰ってきてるって言うし、まひるちゃんも是非って言ってくれてるから。」 恵子さんとはわたるお兄ちゃんのお母さんのこと。 母の“わたるくんも〜”の言葉を聞いて私は 「行かない」と一言で返す。 まだ会える気分じゃない。 「どうしてー? あんたどうせ暇でしょ?」 「暇じゃないよ」 私は不機嫌な態度で答えたが、 「たまには付き合いなさいよ、反抗期の娘じゃないんだから」 といって母は聞かない。 「そうそう、わたるくんの奥さんも一緒に来てるみたいよ。一度はちゃんと挨拶しておきたいでしょ? 今まで家族ぐるみで付き合ってきたんだから」 尚更行きたくない。 でも… 結婚式の時は、奥さんとほとんど言葉を交わすことはなかったから わたるお兄ちゃんがどんな人を選んだのか、もうちょっとだけ詳しく知りたい気もした。 「…わかった。行く」 「そ? じゃあ夕方までに準備しとくのよ。母さん買い物行ってくるから。昼ごはんは適当に作って食べて。」 と行って母は出かけてしまった。 行くとは言ったものの… どうしよう。 何を着て行こう。
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