雷おこし

7/13
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「ダサいっすね」  改源がバッサリと切り捨てた。  サッカー日本代表のユニフォームといえば戦前より現在まで青と白のツートーンカラーである。  ところが三年間だけ、それが赤かった時代がある。1989年、当時の日本代表監督にたっての希望で国旗である日の丸の赤を頂くことになった。それまで日の丸がついていた左胸には日本サッカー協会のワッペンが。三本足のヤタガラスをあしらったデザインはこれが初めてである。  しかしこれが不評だった。まず単純にデザインが古くて野暮ったい。そして赤は近隣の韓国北朝鮮中国が使用している色で見分けにくい。当時の閉塞感漂う空気を少しでも打破しようとした苦肉の策であったがそんなことで弱いチームが強くなるわけもなく、92年に監督が交替すると同時に元の青と白に戻され、日の丸は左腕に復活する。 「思ったまんま口にするなよ。子供か」  しかし改源は高校生、法律的には未成年である。  試合の前日、ホワイトボードに書きこまれたスタメンに一同あっと息を飲んだ。フォワードの位置に改源と菅原の名前が。このチームのエースである本多はその後ろ、二人の真ん中にあった。若いツートップの後ろにベテランのトップ下を配する新布陣で臨むことになった赤のイレブン、日本女子代表。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!