雷おこし

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 準決勝の相手はグループA二位のチャイニーズタイペイ(中華台北)、当時アジア有数の強豪であった。  試合前の練習中に空からパラパラと固いものが降ってきた。雹だ。それが雨になるまで試合が始められず、スタンドには傘の花がまばらに咲く。  チャイニーズタイペイのユニフォームは中華圏のチームには珍しい青。日本よりも消化試合が一つ少ないこともあり、豊富な運動量でなだれこむ。  だが赤い壁は崩れない。増永が指示を出し、ブロックを築く。  広瀬がサイドにはたいたボールに走りこんだ改源がサイドバックをちぎってセンタリング。キーパーの手より高い打点で捕らえた菅原のヘッドがネットを揺らすがキーパーチャージの判定。  倉持の縦パスをセンターバックを背にしながら収める菅原、ヒールで背後に流す。フリーで抜け出した改源がネットに突き刺すが副審の旗が上がる。オフサイド。  ラインを上げれば裏を改源が突き、引いて守れば上から菅原が射抜く。その疾風迅雷の攻めにタイペイの選手が自陣に釘づけになり、攻撃どころではなくなる。  無理に合わせようとはしない、ただこれくらいならできるだろうと信じて。  二人に初めて、阿吽の呼吸が生まれようとしていた。
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