雷おこし

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 日本女子サッカーリーグも10チームに増えた三年目。しかし葛飾クラブはまだ過去二回、優勝の経験がなかった。  記念すべき第一回優勝はサッカーどころ静岡の強豪、浜松レディース。堅守速攻をモットーとするチームで鋭い反応と広い守備範囲、特にPKに無類の強さを発揮するゴールキーパー増永成美はその象徴とも言うべき守護神。  翌二回大会はその年に加盟したばかりの企業チーム、山日證券が無類の強さを発揮して初優勝。その強力な母体を生かし選手が半日働いて半日サッカーに打ちこめる環境を作り有力選手を集めた。若きディフェンスリーダー倉持祐実は愛らしい顔立ちで雑誌にも取り上げられた。  西には神戸電工エスペラント。前身となるクラブから数えるとすでに二十年以上の歴史を持つ女子サッカーの草分け。ゲームメーカー、広瀬史子の左足からくり出されるスルーパスは局面を一気に逆転させる力があった。  そして菅原が三年目を迎える葛飾クラブ。その中心は女釜本と呼ばれたストライカー、本多葵がいた。右足だが左足、ヘディングでも点が取れるオールラウンドの点取り屋。  倉持、増永、広瀬、そして本多は男女雇用機会均等法が制定され、社会に進出した女性たちの第一期、二期生たち。まさに新しい時代の女性たちだった。  その中に割って入らんとする菅原はすっかり日焼けし、秋田小町ぶりは影を潜めた。それでもサッカーが楽しくて仕方なかった。  そして、日本女子サッカーリーグが誕生したのは理由があった。
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