雷おこし

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 日本代表の次なる使命は、いかにして中一日で行われる連戦を、できるだけ消耗を少なく、大量点を奪うか。一つでも取りこぼせば北朝鮮に勝ち点で並ばれる可能性が高い。そのためには一点でも多く取り、得失点差でも優位に立っておく必要があった。  かつチームとして徐々に状態を上げ、準決勝にピークを持っていく。そのために十八人の登録メンバーをフルに活かしながら結果を出し続ける必要があった。  香港に4-1、マレーシアに12-0。思惑通りに事は進み最終戦のシンガポール戦に引き分け以上なら一位通過というところまできた。  しかしこの時菅原と改源の疲労は限界に達していた。ターンオーバーするチームにあって、二人だけは全試合にほぼフル出場していたのだ。  得点はしていたものの、二人で崩した得点はなかった。コンビネーションが最も磨かれるのは真剣勝負の場だ。四点五点も入り勝負ありになった後も二人が下げられることはなかった。 「キツいっす」  口では音を上げたようなことを言う改源も、試合では結果を出す。菅原としてもなんとか彼女にパスを出そうとするのだがどうにも呼吸が合わず、自分一人で強引にいくほうがうまくいってしまう。  さらに点は入り、よほどのことがない限りひっくり返されることがない差がついた時、それは起こってしまった。  この日もツートップの後ろでボールを散らしていた本多が、なんてことのないタックルでファウルをもらってしまった。彼女はキャプテンであり、ジャッジの規準を確かめる上で主審に話しかけた。  異議申し立てとして、イエローカードが示された。  本多は北朝鮮戦でも警告を受けており、次の試合は累積警告により出場停止である。
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