旗揚げゲーム

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旗揚げゲームを知っているかのう? 赤上げて、白上げないで赤下げない‥‥ってやるアレじゃ。 何、知ってるに決まっている?それなら、その起源はどうじゃ?そんなもの知らないし、別に知りたくもない?  そこまで言うなら仕方ない、特別に教えてやろう。ずっとずっと昔の事じゃ。 ある国に、残忍で残虐、暴虐の限りを尽くす、まさに暴君と呼ぶに相応しい王様がいた。 暴君なのだから、残忍で残虐なのは当たり前?余計なことは言わんでよろしい。 そんな暴君がいた、ある島での話じゃ。 「王様、二人とも、死んでしまいました」 「なんじゃと。まだ始めたばかりじゃないか。つまらんつまらん!早く次の捕虜を連れてこい!」 跪いた家来の言葉に、残忍な王様は怒り狂って駄々をこねる。 王様に命令された家来は、次の捕虜を連れてくるよう部下に指示した。 首に縄をかけられた捕虜が二人。それぞれ赤い頭巾と白い頭巾を被っている。 首の縄は木の枝に掛けられ、二人の部下が縄の反対側をそれぞれ握っていた。 縄を引っ張ると、枝に向かって捕虜が吊される仕組みだ。 「準備ができました」 家来の報告に王様は満足そうに頷き、怯える捕虜に向けて優しく話しかけた。 「お前達に、生き延びるチャンスを与えよう。これから儂の合図で、お前達の首の縄を引っ張ったり離したりする。まあ、あまり引っ張り過ぎると死んでしまうがな」 ニヤリと笑い、捕虜を見回す。 「さっきの奴らは何分持った?」 家来が間髪入れずに答える。 「三分十五秒でございます」 何、そんな昔にどうやって秒まで時間を計ったかじゃと。いちいち細かい事を気にするな。上手くやったんじゃ。多分砂時計だな。 「生き残った方を逃がしてやる。せめて五分くらいは楽しませてくれよ」 捕虜に嘘くさい約束をした王様は、続いて家来に命じた。  「始めるぞ」 「はいっ」 捕虜の首に掛けられた縄がピンと引っ張られる。 「赤上げて」 王様の号令で、赤い頭巾を被った捕虜の縄が引かれた。 「ぐふぇ」 首の縄を引っ張られ、うめき声を漏らした赤い頭巾の捕虜が宙吊りにされる。 「赤下げないで、白上げない」 赤い頭巾が足をバタバタさせてもがく。 「白上げて、赤下げないで、白下げない」 「うぐっ」暴れる白。 「赤下げて、白下げる」 「赤上げないで、白上げない」 「赤上げて、白上げないで、赤下げない」 生き残ったのは、赤い頭巾の捕虜だった。 咳き込みながら空気を貪る捕虜に、王様が告げる。 「喜べ。お前は決勝トーナメント進出じゃ」 王様は、絶望する捕虜の表情を見るのが大好きだった。 結局、全ての捕虜が死ぬのに二日とかからなかった。 捕虜がいなくなり、大好きな捕虜上げゲームが出来ず退屈を持て余す王様は、代わりのゲームを思いつき、ニヤリと笑う。 翌朝、王様は何人かの家来を呼びつけた。 嫌な予感半端ない家来に、王様は優しく話しかける。優しい口調の時、王様は大抵ロクでも無い事を言い出すのを知っている家来は、予感が確信に変わるのを自覚した。 「ワシは捕虜上げゲームがしたい。今すぐ捕虜を連れてこい」 捕虜がいないのを知っているくせに、無理難題をふっかける王様。 「申し訳ございません。捕虜は全員死にました」 何とかやり過ごそうと謝る家来に、王様は畳みかける。 「申し訳ないと思っているようだから、お前たちを代わりにしてやろう」 残忍な笑みを浮かべて告げた。 王様は、右手に赤い布、左手に白い布を持たせた家来二人を並べて言った。 「ワシの指示通り、その布を上げ下げするんだ。失敗した奴は首を刎ねる。残った方には褒美を取らせよう」 反論したそうな家来を無視し、王様はゲームを始めた。 「赤上げて、白あげて」 二人の家来が必死になって指示に従う。ぎこちなく布を上げる仕草が、ロボットのようだった。 あぁ?、そんな昔にロボットは無いだと?何度言っても分からん奴だな。たとえだよ、た・と・え。 「赤下げないで、白下げる」 「赤下げて、白上げないで、赤上げない」 家来の一人が赤を上げてしまった。 ニヤリと笑った王様は、命乞いをする家来の首を、楽しそうに刎ねた。 残った家来は決勝トーナメント進出を果たしたが、当然うれしい訳は無いだろう。 二人の家来を競わせるというシチュエーションを、王様はたいそう気に入った。 その後も、赤白の布を上げ下げする、そして失敗した家来の首を刎ねるゲームを続けた。 時には、近隣の国から王様達を集めてゲームを見せることもあったという。 だが、家来まで殺してしまうようなゲームをしていて国が治められる訳も無く、やがて滅んでしまった。 これが旗上げゲームの起源じゃ。 何、オチ? 余計な事は言わんでよろしい。
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