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一緒に朝食を
イタちゃんは小柄な猫だったが、丈夫で、すくすく成長してゆくようだった。キャットフード缶はスーパーで売っていたが、今ほど種類も無いし、「何となく味気なくてかわいそう」というのが母の意見。といって、家族の食事は味が油や濃すぎて猫には毒だ。
マンションの近くに1分で走り抜けられるくらいの小さな商店街が有った。
その商店街の魚屋で、母はイタちゃんのために「なまり節」というのをよく買っていた。「なまり節」はカツオを水煮したもので、母はそれを半身ごと買ってきて、薄い切り身にし、手で細かくちぎってあげる。小アジの干物やマグロの血合の水煮も好んで食べたが、イタちゃんはスーパーで買ってくる「カニかまぼこ」が大好きみたいで、たまにあげると「ウニャ、ウニャ(美味しいね!美味しいよ!)」と言いながら食べていたっけ。。。
そのうち、海釣の好きな父も、普通なら、釣れても捨ててくる本命ではない魚を「はい、イタ公におみやげ」と、小さなクーラーボックスに入れて持って帰ってきてくれるようになった。
後に、いろんな猫を飼ったが、あんなに魚で育った子はいない。
イタちゃんが丈夫だったのは、そのせいかもしれない。
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