2人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
あの子と傘と僕
あの子は、ずっと傘をさしてる。
雨の日はもちろんだけど、晴れの日まで傘をさしててちょっと変だ。
女の人が、日焼けをしたくないとかで、使う傘じゃなくて、あの子の傘は透明なビニール傘。あれじゃあ、日よけになってない。ますます変だ。
僕は気になって仕方がなくて、あの子に聞いてみた。
「どうして晴れてるのに、傘をさしてるの?」
あの子は笑って言った。
「この傘にはひみつがあるんだよ。・・・入ってみる?」
ちょっと恥ずかしかったけど、僕はあの子のさす傘に入ってみた。
_______________鳥が飛んでいた。
あの子の傘の内側に、小さい黄色の鳥が描かれていて。
透明なビニール傘越しの青空を、飛んでいるように見えた。
「ね、かわいいでしょ?」
あの子は、くるりと傘をまわした。一緒に鳥も空を一周した。
「・・・うん、かわいいね。」
僕は笑顔であの子に言った。
あの子と傘のひみつは、僕だけが知ってる。
だって、あの子と傘にはいるのは、今では僕だけの特権だからね。
最初のコメントを投稿しよう!