あの子と傘と僕

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あの子と傘と僕

あの子は、ずっと傘をさしてる。 雨の日はもちろんだけど、晴れの日まで傘をさしててちょっと変だ。 女の人が、日焼けをしたくないとかで、使う傘じゃなくて、あの子の傘は透明なビニール傘。あれじゃあ、日よけになってない。ますます変だ。 僕は気になって仕方がなくて、あの子に聞いてみた。 「どうして晴れてるのに、傘をさしてるの?」 あの子は笑って言った。 「この傘にはひみつがあるんだよ。・・・入ってみる?」 ちょっと恥ずかしかったけど、僕はあの子のさす傘に入ってみた。 _______________鳥が飛んでいた。 あの子の傘の内側に、小さい黄色の鳥が描かれていて。 透明なビニール傘越しの青空を、飛んでいるように見えた。 「ね、かわいいでしょ?」 あの子は、くるりと傘をまわした。一緒に鳥も空を一周した。 「・・・うん、かわいいね。」 僕は笑顔であの子に言った。 あの子と傘のひみつは、僕だけが知ってる。 だって、あの子と傘にはいるのは、今では僕だけの特権だからね。
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