10 デボーション

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 暗くて。 優しくて。 怖くて。 暖かくて。  ちゃんとそこに、いたはずなのに。 「…………」  おなかの辺りが重くて。今いる場所がわからなくて。明るいけど、朝なのかとかお昼くらいなのかとか夜なのかとか真夜中なのかとかは、わからない。 「……だ、れ」  かすれた声が自分の喉からでてびっくりした。  明るいけど、それは電気が点いてるからで。おなかの辺りが重いのは、誰かが頭を伏せて寝てるからみたい。  黒い髪のさらさらな、そのひとは絶対そうだけど、聞いてみる。 「おにい、ちゃん?」  ケホっと咳をしたら、飛び起きた。  キィーンと耳鳴りがしていて、どこかぼんやりした全部は全部おかしいなって思う。 「ひま。起き上がらなくていい。今、飲み物用意するからな?大丈夫か、頭痛いとかどこか痛いところは?」  ぼんやりした頭では、目に映るものもぼんやりしたものになるのかな。  お兄ちゃんは立ち上がってどこかに行こうと体をドアに向けたのに、また元いた場所に戻って私の頭を撫でながら優しく聞いてくる。  ワンテンポ、遅れてるような。 エコー? 動きもゆっくりなら、声もゆっくり耳に届くようなそんなぼんやりした全部。 「……ひま?」 「お兄ちゃん、どうかしたの?私、すごく寝坊しちゃったの?」  リセット出来るかなって一回目を閉じてまた開いてみるとお兄ちゃんの綺麗な顔が、目の前にあった。少しはっきりしてきた世界には、すごく心配した、痛そうな顔。  私、この顔のお兄ちゃんを知ってる……。 あの日。 私を迎えに来て、泣いていたあの時。 「お兄ちゃん、のどが、かわいて……」 「あ、ああ、悪い。持ってくるから、それまでおとなしくな?」  どうしたんだろう。 そわそわしてるのがこんなにわかるお兄ちゃんなんて、珍しいと思う。  ごしごし目を擦ったら、パジャマの生地が見えて、私が今着てるのはいつものパジャマなんだって気付く。  パジャマ……いつ? いつ着替えていつ寝たんだろう?
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