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あれから数日。
朝はヘイケ君が。
お昼はヘイケ君とシオルさんとオトヤさんが。
帰りは誰かが。
必ず一緒にいてくれる。
「どうして?」
聞いてみた。お昼休みは『頂上』……立入禁止のはずのこの屋上で過ごしてる。
5月も半ばともなれば、陽射しが強くなってきていたから、私は日陰に入ってることが多いけど、フェンスに寄り掛かりながらタバコを吸うオトヤさんに、ひなたぼっこしながらお昼寝気味のヘイケ君に、私の隣には必ずシオルさんが並んで、のんびりしたお昼を楽しんでいた。
「何が?」
「……みんな、優しいから、どうしてかなって……」
言いながら、聞き方がおかしいなって思った。これじゃ、3人を疑ってるみたいじゃない。そうじゃなくて、ただ、知りたいだけなのに。
言葉を上手く選べなかった私は、答えてくれたシオルさんの次の言葉を聞く前に、両膝を抱えて頭を埋めた。
「まぁは……言葉選ぶのヘタクソだな」
そんな私の頭にポン、と掌を乗せてシオルさんは軽く笑い声をあげる。
「そんなに知りてぇ?俺達のこと」
茶化した声だけど、乗ってる掌は優しく頭を撫でてくれてる。
本当に、不思議なひと。
「いじめは許せない、正義の味方、まぁ専用」
「…………」
本当に、不思議なひと……。
「シオル、うぜぇ」
「ショール、キモい」
少し離れた場所にいたはずの愛煙家と眠ってたわけではなかったらしい昼寝愛好家が続けざまに、ツッコミを入れる。風もなければ誰も話さない静かな屋上では、人の声は良く通るものなのか。
……教科書を貰った日を思い出して違うと思った。
このひとの声は、小さくても良く通るいい声なんだって思い直したから。
「何聞いてんだよ、まぁと俺の蜜事・秘め事をッ」
「!」
耳だけをアンテナ張り巡らせるようにして、会話を聞いていたのに突然体が傾いて、頭に響いてきたのは。
「あ。まぁって俺の腕ん中すっぽり入る~」
彼の、シオルさんの、心臓の音だった。ぎゅむっぎゅむっと何回も、確かめるように力を込めたり力を抜いたり。甘い香水を、付けてる本人から直接嗅いでる状態。
「……あ、あの……」
困る。
私はこういう事に慣れているわけなんかなくて、対処の仕方がさっぱりわからない。
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