<第一話~アシュリーとジョシュア~>

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<第一話~アシュリーとジョシュア~>

 アシュリーは苦い顔をした。人を意味もなく嫌うなんて、仲良くなれない人がいるなんて、そんなものは自分の流儀に反するとは分かっていたのだけれど。  それでも、己と真逆の信条を持つ相手と突然コンビを組めと言われてしまえば、微妙な気持ちになるのはどうしようもないことではなかろうか。 「アシュリー、言いたいことはよくわかります」  自分と――隣にいる少年、ジョシュアの担任教師であったマチルダ先生は。アシュリーの気持ちを察してか、少し困ったようにその眉をハの字に曲げた。 「それでも、これは私と、他の先生方も協議の上で決めたことなんです。アシュリーとジョシュア。貴方達二人が今回の魔王討伐に選ばれたのですよ。二人で協力して、魔王ファウストを倒すのです」 「何故ですか。いつもなら、魔王討伐の勇者は、魔王が現れた年に卒業する生徒うち、一人しか選ばれないはずですよね。一番優秀で、魔王を倒すのに相応しい逸材だけ。仮に私とジョシュアの成績が横並びであったとしても、彼の力が魔王討伐に必要だとは私には思えません」  アシュリーはきっぱりと言い放った。ちらり、とジョシュアに視線を向ける。キラキラとウェーブした金髪に金眼のアシュリーに対して、まるでカラスのように真っ黒な長い髪に眼をしたジョシュア。綺麗な顔をしている、とは思う。むしろ美形だからこそ、アシュリーはいつもジョシュアの存在が不満で仕方ないのである。  もっと笑えば素敵なのに。女の子にだって絶対モテるというのに。  いつも彼は暗い顔をして俯いているか、厳しい視線を周囲に向けてばかりいる。勿体無いとしか言い様がない。そして、アシュリーがジョシュアを一番嫌う――というより、苦手としている最大の理由は一つだ。 「魔王を倒すのは、光の魔法だけで十分なはず。闇の魔法しか使えない彼の力は、より魔王を深い深淵に突き落としてしまうだけだと思います」  光の魔法こそ世界を救う。そう信じて、光魔法を中心に学び、鍛えたアシュリー。  対してこちらの方が性分に合うからと、闇の魔法ばかりを使って成績を伸ばしてきたジョシュア。  少女と少年は、完全に真逆の存在だった。見た目も、性格も、使う魔法も何もかもが。
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