<第二話~色のない視線~>

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<第二話~色のない視線~>

 別に、アシュリー以外が勇者に選ばれるというなら、それは仕方のないことである。一番成績が優秀な生徒が選ばれるとは言われているが、魔法学校の成績は目に見えるものだけで決まるものではないからだ。場合によっては、今世界を脅かしている魔王の能力との愛称も鑑みて決定されることもあるらしい。  例えば、魔王の防御属性が水属性だった場合(全ての人間は、己の体質に合わせて属性を持っている。その属性により、耐性のある魔法とダメージが倍増する魔法があったりするというわけだ。)、魔王により効果的なダメージを与えられるのは雷魔法ということになる。優秀な生徒が複数人いて、その中に雷魔法が得意な生徒がいれば――その生徒が勇者に選ばれるのは必然というわけだ。  それゆえにアシュリーも、仮に己がそういう理由で選ばれなかったのなら仕方ないと諦めるのである。得意不得意は誰にでもある。そして属性を覆すほどの力を身につけられなかったとすれば、それは単純にアシュリーの努力不足以外の何者でもないからだ。  だから。アシュリーが不満に思うのは、そこではなくて。  自分が選ばれたのに――何故か慣例を覆して、勇者が二人であること。それがよりによって、苦手なジョシュアであるということである。  それはただジョシュアの性格や性質が苦手なばかりではない。彼が――その戦い方には些かの問題があるとしても――魔導士として極めて優秀な部類であることは知っているからだ。そうではない。彼の属性が誰がどう見ても闇属性であり、自分が光属性であることが問題なのである。 「全く意味がわかりません!」  募金箱を持って並びながら、アシュリーは頬を膨らませる。今は学外の課外活動の時間だった。魔法学校の生徒は頻繁にボランティア活動に駆り出されることがある。今回のコレもひとつ。貧しい町や都市部のスラムの子供たちを救済するための募金活動である。駅前の広場に立って、募金箱を持って通行人達に募金を呼び掛けるのだ。  この活動はまったく嫌いではない。むしろ、世のため人のためになる素晴らしい活動だとアシュリーは確信している。問題は――今日はそのペアの相手が、よりにもよってジョシュアであるということだ。  先生はアシュリーがジョシュアに苦手意識を持っていることも、二人の正反対な性格もよく分かっている。ゆえに、このまま旅立ってもうまくやっていけるか不安で仕方ないのだろう(ならなんで、勇者を二人にした上で自分達を選んだんだ、とこっちは腐りたくなるわけだが)。それまでに少しでも親交を深めてもらおうと、二人で組む活動を増やしたという意図はわかる。わかるといえば、わかるのだが。
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