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「どうして勇者が二人で、しかも私と貴方なんです?相性で選んだわけではないのに、どうして?」
「ご機嫌斜めか」
「当たり前です!ていうか、ジョシュア、貴方だって本当は嫌なんじゃないですか?私のこと嫌いでしょう?」
「そうだな」
そこであっさり肯定してくるからコイツは嫌なのだ。自分で問いかけておいてなんだが、アシュリーはますます機嫌を悪くすることになる。
名家のご令嬢だからと、そういう贔屓をしてほしいと思ったことはない。でも、それでもせめて多少なりの女の子扱いはしてくれてもいいのではないか。名誉ある勇者に選ばれる人間に男も女もない。そういう意味で、都合の良い時ばかり女の子扱いを要求するのもどうかとは思うけれど。
「魔王討伐の歴史を調べてみました。勇者の多くは最も優れた魔法使いか、あるいは属性の相性が良い人間が選ばれてきました。今期、悔しいですけど私はダントツトップの成績というわけではありませんでしたからね。私と貴方、それ以外にも数人横並びがいましたから、私以外の誰かが選ばれても仕方ないなとは思ってましたよ。勇者になるつもりで学校に入りましたけど、ダントツトップになれなかったのは純粋に私の力不足ですから、それは仕方ないのです」
自分とジョシュア以外に、友人のアマンダ、カティア、ローザ、ケニス。合計六人で、今期は拮抗していたと知っている。自分で言うのもなんだが、今回はなかなかの豊作で、全体的にレベルが高い生徒が揃っていたためだ。
「でも、じゃあどうして私と貴方、なんてことに?魔王ファウストは情報によれば風属性の魔法の使い手であったはず。つまり本人の属性も高い確率で風属性!なら、土属性のケニスを選ばない理由がわかりません。私と貴方じゃ光と闇!風属性相手にはノーマルダメージしか与えられないじゃないですか!」
正確には、自分は光魔法以外も使えるのだが。それでも属性一致の魔法と比べて、自分が扱う他の属性の魔法は格段に落ちるのである。
そもそも、別属性のアシュリーやジョシュアに土魔法を打たせるくらいなら、ケニスを呼んできて始末をつけさせる方が格段に早いし効率的ではないか。
「アシュリーとやら」
そんなアシュリーに、ジョシュアはそっけなく言う。
「今はっきりわかった。……お前、言われたことと見たことを、そのままにしか受け取れないタイプだろ」
「はぁ!?」
「そこでどうして考えないんだ?討伐するならば、お前と俺なんて組み合わせで向かわせるのは非効率にもほどがある。コンビネーション抜群な連携タイプなら、慣例を破棄してでも二人一組で勇者に選抜する意味があったんだろうが、俺達は違う。相性の悪さは折り紙つきだ。むしろ戦いになれば、お互いの足を引っ張り合う結果さえ予想できる。……なら、そこから先を考えろ。“他に何か目的があるかもしれない”と思ってみたらどうなんだ」
「他の目的、って……」
尋ねようとしたところで、あのー、と声をかけられた。見ればお洒落なドレス姿の貴婦人が、付き人と共に立っている。上品そう、伯爵婦人とかそのへんかな――アシュリーはそう思いながら、箱を差し出した。
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