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「募金活動、お疲れ様。生徒さんも大変ね」
はい、と言いながら彼女はコインではなく、お札を畳んで箱に入れていった。流石上流階級の奥様は違う。実に太っ腹である。
「ありがとうございます!いえいえ、これで困ってる人を助けられると思えば、全然大変なんかじゃないですよ!」
「感心なお嬢さんだわ。貧しい人への募金というけど、このお金は最終的に何になるの?」
「え?えーっと……」
そういえば、困っている人を助けるため、としか聞いていない。アシュリーは授業の記憶を全力で引っ張り出す。確か――そう、確か。スラムの子供たちを支援するのが主な目的、であったはずだ。どんな風に支援するのかというと、多分貧しい人にパンを配ったり、孤児院を建てたりするのだろう――多分。
「色々です!食べ物も住むところも、足りてないものがたくさんありますから!」
アシュリーの曖昧な答えに、それでも満足したらしいマダムはにっこりと笑った。
「そうなの。頑張ってね、可愛いお嬢さん」
労うように肩を叩いていく女性。瞬間、ふわりと香水のいい匂いが薫った。あれはローゼリア社の新作!とアシュリーは直感する。全く同じものを母が先日から愛用しているのである。やっぱり気品のある奥様は、香水からしてセンスが違うと言うものだ。ドレスに負けないくらい値が張る代物だというのに、お洒落にお金をかけることを躊躇わない。実に素晴らしい。
「酷い答えだな」
「むっ」
そしてそんなアシュリーの、少しいい気持ち、をあっさりブチ壊していくのが隣の男である。
「色々支援が必要って、そんなの当たり前だろ。いい加減すぎる。自分がやってる募金活動の意味くらい知っておけよ。世のため人のためにボランティアやってます、で自己満足か」
「何ですかその言い方!そういうジョシュアは、この募金が何に使われてるのか知ってるんですか?」
「知らない。知らされてないからな」
「自分も知らないんじゃないんですか!ならそんな偉そうにしないでくださいよ!」
何なんだこいつは。知らないなんて、と馬鹿にするくらいなら自分は知ってるのかと思いきや。
するとジョシュアは眉をひそめて、そこで終わるからお前は馬鹿なんだ、と宣ってきた。
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