<第三話~行方知れずの善意~>

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<第三話~行方知れずの善意~>

 どうしてあの子供達は、自分達のことをあんな憎々しい眼で見つめていたのだろう。アシュリーはずっと考え続けていた。確かに、自分は今まで考えたことなどない。募金活動に従事すれば、自分達が集めたお金は必ずどこかで誰かを救っているとばかり思っていた。その行先に、なんら疑問を挟んだことなどない。それは魔法学園の先生達を信頼していたからだ。――いや。 ――考えることを。放棄してたってこと、なのかな。私は。  そう考えると、少しだけ気持ちが沈んでしまう。あのジョシュアの言葉に対して、結局まともに言い返すことができなかった。それは半分以上、図星を指された結果であったからだと言っても過言ではない。  何よりあの、ボロボロの服を着た姉妹の顔が忘れられないのだ。自分達が募金をしていて、そのお金が最終的に弱者の役にたてられることを彼女達が知らなかったとは思えない。自分達は毎月のように駅前に立って募金活動を行ってきたし、そのたびに“貧しい人達のために募金をお願いします!”と声を張り上げてきたのだから。自分達のために頑張ってくれている、と感謝こそすれ、恨まれる筋合いなどないはずだというのに。  もし、恨まれる理由があるのだとすれば。 ――私達のお金。ちゃんと、あの子達のために使われていなかったのかしら。  段々と不安になってきた。募金活動を終えて、学園に戻ってきたアシュリーの足は。自然と教員室に向いていったのである。  話を聞きたい相手はただ一人。自分が最も信頼する担任教師である、マチルダ先生である。  そういえば、彼女も“元勇者”だったという話を聞いたことがあるような気がする。うろ覚えだったゆえ、本人に直接話を確認したことなどなかったけれど。
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