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些細な事から彼女の吐く糸が見え始めた。それは、よく見ないと見えない透明な、だけど獲物をしっかり捕らえる蜘蛛の糸のようだった。
「本田さん、今度、坂口さんと旅行に行くの?」
更衣室で一緒になった先輩に聞かれた。仕事終わり、私服に着替えながら先輩は羨ましそうに言う。
「いいなぁ。“シー”でしょ?私“ランド”しか行った事ないんだよ。坂口さんが“亜希からシーに誘われた”って、宣伝して回ってたよ。」
「えっ。ああ、そうなんですか?」
私は相槌を打ちながら、微かな違和感を覚えた。誘ったのは私なの?優子が先に行きたいと言ったんじゃなかった?その違和感が糸の端っこだったのかも知れない。気付くと私は優子の糸にガッチリと絡め捕られていた。
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