蜘蛛女──彼女は透明な糸を吐く──

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 教室の待合室で所在なく待っていると、レッスンが終わり、優子とその先生が楽しそうに話しながら連れ立って出てきた。 「今日ね、友だちが来てくれたの。先生のこと、カッコイイって言ったら、どうしても見たいーって言って。ね?」  最後の、ね?は私に向かってだった。大して見たくもなかった先生に会い、とんだ野次馬に仕立てられ、胸の中に黒い(もや)のような感情が流れた。  それから何週間か、心の中の靄が薄れた頃、優子はとんでもないことを頼んできた。 「だからさ、亜希とご飯に行ってるって事になってるから。もし宮沢さんと話すことあったら、話、合わせておいて。ね?お願い!」  英会話教室の先生と付き合い始めた優子。宮沢さんとの付き合いはそのままに。二股のアリバイ工作を頼まれたのだった。
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