蜘蛛女──彼女は透明な糸を吐く──

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 数日後、少し残業した後、着替えの為に更衣室に向かっていると、休憩室の販売機の前に宮沢さんがいた。 「お疲れ様です。残業ですか?」 「そうなんだよ。客先が急に無理な変更入れてきて、見積、明日までにって言われてね。課長と今日は徹夜かーって、言ってたとこ。」 「もしかしてユニサプライ社の?あれ、結構大きい案件ですよね?何かお手伝い出来ることありますか?」  私がそう言うと、宮沢さんは何か言おうと口を開きかけたようだったけれど、それより早く、少し離れた所にいた上村課長が口を挟んできた。 「ある!ある!あるよー!助かるなぁ、本田さん!お願い!」  上村課長は逃がすものかと飛びかからんばかりの勢いで頼んできた。お二人のアシスタントの女子社員は既に帰ってしまっていて、本当に困っていたようだった。三人で必死になっていると、思っていたより早く仕事が片付いた。
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