蜘蛛女──彼女は透明な糸を吐く──

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 それはその翌日だった。がんじがらめだった糸がプツリと簡単に切れた、そんな感じだった。 「ねえ、優子、お昼、今日はお弁当?社食?」  優子は私の問いかけに一切答えない。目も合わせない。訳が分からなかった。何?私が何かした?何かあった?記憶を探るも、優子の機嫌を損ねるような事をした覚えはなかった。何で?どうして?  とりつく島が無いとはこの事だ。「何か気に障ることしちゃったんならゴメンね。何で怒ってるの?」  そう声をかけても無反応だった。  他の同期の女の子も、仲が良かったはずの私達の様子を心配してくれて、優子に探りを入れてくれた。 「うーん、優子さぁ、ハッキリとは言わなかったんだけど、宮沢さん絡みかな?何かあったの?宮沢さんと。」  何も無かった。残業して、三人で食事して、それだけだ。上村課長もずっと一緒だったのだ、プライベートな話すらしていない。
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