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5月。
相変わらずな2人、ゆりと真冬はまた放課後のドライブに向かっていた。
「ねえ、この前からよくこの辺走るよね…
好きなん?」
助手席からゆりが真冬を見つめる。
「ん…?
…俺は、ゆりが好きだよ」
「ばっ…!」
ゆりは歯の浮くような思いをしてーー真冬を睨む。
「そーゆーこと平気でポンポン言えるんが都会の男なんやね…
あー怖い怖い」
「都会も田舎もないだろ…好きなものを堂々と好きと言って何が悪い」
ゆりは一瞬真っ赤になって絶句してーー
すぐ気を取り直して真冬を見た。
「…話戻すけど、
この辺の道のドライブが好きなんかって聞いたんよ」
「ああ…うん…好きだよ。
ずっと…探してるんだけど…なかなか」
「何を?」
「…樹」
「き?
『き』って、あの『木』?樹木の、木?」
「うん。樹齢1000年とも言われるクスの樹がーー」
「ああ…クスの樹か」
真冬がチラっとゆりを見た。
「…知ってるのか?」
「うん…ナビしようか?」
田舎道。
新緑の美しい緑。
山々が青く何層にも重なっていく。
ゆりのナビで、真冬とゆりはとうとう樹齢1000年とも言われる、地元の伝説のクスの樹のところにたどり着いた。
「………」
真冬は車から降りると、しばらく空を見つめていた。
まだ先に歩かないといけないがーークスの樹は大きすぎて、まるで森のように空を覆っている。
「すごい…やっと、来れたか…」
「…」
見つめるゆりに、真冬は微笑む。
「ゆりと一緒だったからかな。
ホント、実は、何回来ても、ここだけはたどり着けなかったんだ…
カーナビでも地図でもね。
何かの力が働いてるみたいにさ…」
「…」
「ウェブで見かけた時から、ずっと探してた」
ーー何かの、力?
なんか…ホントに思い入れがある感じやな…
ゆりは本当に嬉しそうな真冬を見つめた。
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