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「…っ」
ギュッとつぶった目。
ーーフワッと、今度は抱え上げられた。
「きゃ…!」
ーーこここここ…これ…これは!!
女子のあこがれ…
お、…おおおおおおお姫様抱っこってヤツ…やんか…!!!
真っ赤に頬を染めるゆりに対して、少し怒った顔の真冬の顔がーー
ゆりの目の前にあった。
「…ゆり、おまえなあ」
呆れたような、言い方。
鼻の先がくっつきそうな、吐息がかかる、その距離。
「ぎっ…
…ぎゃあああああああああ!!!」
およそ色気もなく思わず叫んでしまうと、真冬は『耳が痛い!』と言わんばかりに顔をしかめ、放り投げるようにトン!とゆりを立たせた。
「…はあ…ったく、世話のかかる…」
ストンと、今度は地面に足も着き、安定できた。
「…ごめん…
ありがと…」
助けてくれたのに、騒ぎすぎて文句まで言ってしまったゆりが
恥ずかしくなって小さく言う。
真冬はゆりの顔を見て、すぐに機嫌を直した。
「…そうやって素直だととっても可愛いんだがな。
いつもそうしてればいいのに…
あと5ヶ月ちょっとで
俺の嫁なんだから」
「…!」
ゆりは、なぜか真っ赤になって、何も言えなかった。
いつもの反撃を待っていた真冬は、意外そうな顔をして目を開く。
「ゆり?
なんか素直すぎるのも調子狂うな…」
「わ…悪かったね!」
真冬は今度はにっこり笑って、ゆりに手を伸ばした。
「おいで。
帰ろう」
ゆりはじっと睨むように真冬を見てーー一瞬、戸惑うがーー
右手を出した。
ギュッと握って嬉しそうな顔を隠して、真冬は歩き出した。
手を引かれ、ゆりも口元が緩むのを感じていたーー
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