真冬先生

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「ゆりが、欲しい」 ドクン…! 低い声。切ない顔ーー 目をそらすのさえ許さないとばかりに、ゆりを見つめる熱い瞳。 ゆりの鼓動がひときわ跳ねる。 それはたぶん、初めて。 痛いほどに 「…」 いつもならポンポン出てくる拒否の言葉ーー 何故か今日は、出てこなくて。 ゆりをじっと見ていた真冬は、プッと吹き出した。 「ふふふ…ははは…」 「?!」 はあ?からかわれたん? ゆりはカッと赤くなってーー真冬の手を払うと立ち上がった。 真冬は顔を伏せて笑っている。 「もう…何なん!」 ゆりがもう出ようと、ドアへ振り返ると、パシッと後ろから手首を掴まれた。 「!」 「ふふふ…笑ってごめん。 ごめん、ゆり、待って」 真冬からクリンッっとカラダを反転させられる。 ゆりの顔は不機嫌だ。 「ごめん。 ゆりが、ーーいつも辛らつに拒否してくるゆりが… 今日はなんか違って。それが嬉しくて…」 「…」 「この2ヶ月で、ほんのちょっとは、俺のこと好きになってくれる余地が出てきたのかななんて」 ………うん。 ーーきっと、少し惹かれとる 変態で、強引な、この人に。 でもそれは、この外見なんか? この男のスペックなんか? 自分を『欲しい』って熱烈に言ってくれるからなんか? ゆりにはまだわからない。 「…余地なんか、ないわ」 いつもみたいに全力では言えないゆり。 真冬は保護者のように優しく微笑んだ。 「うん。今は、いいんだ 10月31日までに。 『真冬、好き』って言わせる。 ゼッタイ。 もう、俺には見えたよ」 「はあ?バカやないん!」 「ゆり…頬が赤いよ?」 くすぐったそうに、真冬は笑った。 胸の奥がほんのり温かい。 どうしよう? 父親の借金から始まった出会いやのに… この人のことーー 私は…
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