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放課後
「ゆり、帰るぞ」
下駄箱のところに来ると、玄関に当たり前のように真冬が立っていた。
「あ、九条先生だ」
「先生、もう帰れるの」
「ああ」
一緒の同級生たちが声を掛ける。
女子生徒の目はトロントロン。
男子生徒からも声を掛けられている。
みんな、イケメンならいいんか…
まあ、授業もおもしろかったけど
ゆりの目が据わる。
「ゆり」
真冬は生徒たちを軽くあしらうと、ゆりの目の前まで歩いてきた。
「アンタ…職員会議とかないん?」
真冬はニコッと口だけで笑った。
目は、笑ってない。
「臨時だから参加しないと言った。
あと、ゆり、『真冬先生』な。」
ーーすげー適当な臨時教師…
やっぱりお金の力か…
「…ヘンタイ教師」
「…ゆり(怒)」
結局ゆりは今日も真冬の車に乗る。
他学年も含め、女子生徒たちがきゃあきゃあと騒がしい。
ゆりは、目立つことは、嫌いだったがーー強引な真冬を断ることが出来ないのは、この2ヶ月でよくわかっていた。
車が門を出ると、ゆりはやっとホッとため息をつく。
「…」
真冬が口を開く。
「ゆり」
「ん?」
ゆりは車窓から見慣れた町の景色を眺める。
生まれた町。
田舎でも、海も山もある、ここが、好きだ。
「今日は、俺のとこに来てみないか」
「…アンタんとこって、ホテルやろ?
そんな悪の巣窟に行くか!」
真冬は、元々都会の男だ。
ゆりを『見つけた』から、今はこの田舎町の駅前のホテルに連泊中と聞いている。
「10月31日までは、何もしないよ」
真冬は笑う。
10月31日は、ゆりの18歳の誕生日だ。
真冬と結婚する、一方的な、契約の日…
「…10月31日になっても、何もさせんわ」
「ははっ…それは無理だな。
まあ、10月31日までに、ゆりが望めば。
俺を、ゆりに捧げる…
服を1枚ずつ脱がして、
恥ずかしいことをさせて、
俺のカラダを好きにすればいい
写真も、ビデオもいいよ…ゆりのためなら」
「ばっ…アンタ、バカやないん!?」
ゆりは真っ赤っかになった。
真冬は、下品だ。
とても、とても、エッチそうだ…。
その日も、一緒に過ごすと、ゆりは真冬に送られて、自宅に戻った。
「ゆり、今夜はゆりのベッドで一緒に寝よっか?」
「バカ!!」
「添い寝だよ」
「信じられるか!」
ニヤニヤ笑う真冬。
ゆりは逃げるように真冬から離れると、玄関のドアを開けて振り返る。
「また明日な。お休み!いい夢を」
「うん…おやすみなさい」
明日も?
明日も、朝、アイツ、来るんかな?
ゆりは勝手に綻ぶ口元を抑えた。
ーーなんか…。
これって…
私…待っとる?
まさか。
ゆりはブンブンと頭を振る。
サッとお風呂に入ると、早めにベッドに入った。
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