第一王子・ハル

2/11
前へ
/68ページ
次へ
ぴちょん…ぴちょん… ーーなに? 水の音… キレイ… 眩しい… ゆりはゆっくりと目を開く。 「あ、れ…」 小さな泉のほとり。 森の中に寝ていたゆり。 湿気の多いキレイな空気。 見渡す限りの、深い緑。 鳥はさえずり、風がそよそよと吹く。 「あ」 ゆりはいっぺんに思い出した。 ヨリが教えてくれたーー3020年の、地球。 ここは、日本じゃない。 『イーストエンド』だ。 なんで、忘れとったんやろう? 夢やけど、夢やない世界… んー…ここどこなん? ヨリ…どこにおるんかな… むくりと起き上がると、泉を見た。 透き通る透明度の高いそれに自分の姿を映してみる。 ーーちゃんと、髪が青みががっちょる。目も… さらに、この前は部屋着だったのに、今回は、ヨリが着ていたみたいな昔のヨーロッパみたいな質素な服を身に着けていた。 足首まである、長いスカート。ピタッとした、ボタンのたくさんついた、シャツに、エプロンまで。 ヨリの、魔法か? ゆりは勾玉を握りしめた。 さて… キョロキョロと辺りを見渡す。 全く土地勘はないけど、この前の森によう似とる。 『百花』の花畑からなら、ヨリの赤いトンガリ屋根の家への行き方は一本道やし、なんとなくわかる。 1000年後の未来へのタイムスリップ。 何がきっかけで発動するのかは、ゆりにはまだよくわからなかった。 そして、この世界で頼れるのは、ゆりには、ヨリだけだったから。 ゆりは立ち上がると、パンパンっとカラダをはたいて、歩き出した。 ヨリと、ヨリの家を探そ…うん、なんとなーく、こっちっぽいわ こういう時の勘はあるっちゃ。 取り敢えず歩き出す。 数歩歩いたところで、馬のいななきが聞こえた。 「あ…」  
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加