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ぴちょん…ぴちょん…
ーーなに?
水の音…
キレイ…
眩しい…
ゆりはゆっくりと目を開く。
「あ、れ…」
小さな泉のほとり。
森の中に寝ていたゆり。
湿気の多いキレイな空気。
見渡す限りの、深い緑。
鳥はさえずり、風がそよそよと吹く。
「あ」
ゆりはいっぺんに思い出した。
ヨリが教えてくれたーー3020年の、地球。
ここは、日本じゃない。
『イーストエンド』だ。
なんで、忘れとったんやろう?
夢やけど、夢やない世界…
んー…ここどこなん?
ヨリ…どこにおるんかな…
むくりと起き上がると、泉を見た。
透き通る透明度の高いそれに自分の姿を映してみる。
ーーちゃんと、髪が青みががっちょる。目も…
さらに、この前は部屋着だったのに、今回は、ヨリが着ていたみたいな昔のヨーロッパみたいな質素な服を身に着けていた。
足首まである、長いスカート。ピタッとした、ボタンのたくさんついた、シャツに、エプロンまで。
ヨリの、魔法か?
ゆりは勾玉を握りしめた。
さて…
キョロキョロと辺りを見渡す。
全く土地勘はないけど、この前の森によう似とる。
『百花』の花畑からなら、ヨリの赤いトンガリ屋根の家への行き方は一本道やし、なんとなくわかる。
1000年後の未来へのタイムスリップ。
何がきっかけで発動するのかは、ゆりにはまだよくわからなかった。
そして、この世界で頼れるのは、ゆりには、ヨリだけだったから。
ゆりは立ち上がると、パンパンっとカラダをはたいて、歩き出した。
ヨリと、ヨリの家を探そ…うん、なんとなーく、こっちっぽいわ
こういう時の勘はあるっちゃ。
取り敢えず歩き出す。
数歩歩いたところで、馬のいななきが聞こえた。
「あ…」
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