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4月。
高校3年生に、ゆりはなった。
真冬はあれから毎日のようにゆりを誘う。
「…ねえアンタ、そんなヒマなん?」
ゆりが聞くと、『自分は方針を決めるだけで経営は任せているし、パソコンと携帯さえ手元にあればできる仕事なんだ』と真冬は笑った。
都会の男が、ゆりの地元ーー田舎のホテルに、ずっと住んでいるらしい。
ゆりと毎日会うため、ただそれだけのために。
「10月31日。
ゆりの誕生日に、入籍するからな」
真冬は偉そうに折に触れてゆりに言う。
「いやだ…!」
「絶対にそれまでに口説いてやるから。覚悟しとけ、ゆり」
「無理やん…!」
「絶対『真冬さん、好きですっ』って言わせてやる」
「もう、アンタ、バカなん?」
「当面の新居は駅前のマンションを買えばいいよな」
「人の話を聞けーーー!」
ゆりはバンバン、無下に断る。
断りながらも、強引な真冬をーー最近ではもしかしたら待っているのかもしれない自分にーーやっぱり気づかないふりをしたーー。
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