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映画館に行くまでの道のりを、晩ご飯に何が食べたいか。なんて話したり、バイトの話をしたりと仲良く歩いていた。
ようやく着いた映画館。何年振りだろうか…。俺はあの日以来、映画館に行くことが本当に怖くなった。行けば、美咲の俺を睨む様なあの目、そして血溜まり、美咲の綺麗な肌に突き刺さる数多のガラス破片たち、顔に飛び散った血液。
……思い出すことさえ、吐き気が伴う程の悍ましさ。
事故を起こしたトラックの運転手は、20代の男だった。その青年も、美咲が死んだ事故で命を落としてしまった。
原因は、居眠り運転。安い月給で過度な労働を強いる会社…所謂、ブラック企業に問題があった。とニュースで当時、大々的に報道されていた。
確かに事故を起こしたのはその青年だが、元を正せば俺が美咲を映画に行こうと誘ったから…。俺が誘わなければ美咲は死ななかった。
俺が、俺のせいで……。と考えていると、美咲の心配そうな表情に気付き頭を振って美咲に声を掛けた。
「どうしたん?」
「そっちこそ、どうしたん?怖い顔をして。私、何かした??」
と、俺の顔を覗き込む美咲はそう言った。
美咲に、お前は今日、事故で死ぬ。とか、言えるわけないので、適当に返事を返しておいた。不満そうな顔をしていたけれど、映画館の中に入り、チケットを買いキャラメルポップコーンを買った頃にはそんな表情なんか浮かべずに、ただニコニコと笑っていた。
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