天才魔術師トーリンの受難

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 実際にそんな手段は存在しないのだが、トーリンはあくまで余裕をくずさず周囲を見渡す。くずれたゴーレム達の残骸が徐々に土くれに戻ろうとしいる。ゴーレムの動力源は基本的に純粋に魔力によって稼働している。  魔力はただの動力源というだけではない。ゴーレム達は普通の生物のように骨格を包む筋繊維の伸縮によって動いているわけではない。  当然人間でいうところの関節も基本的には存在しない。全て魔術によって無理矢理稼働させている。本来ただの土くれが動く事はないのだ。  そのため、激しい損耗などによって魔力が失われれば当然元の土にと戻っていく。 その中に、きらりと光るものがあるのをトーリンは見逃さなかった。 「ドラゴンの足」  トーリンが呟く。 「ドラゴンの足?あれを唱える時間があると思うのか?大体、貴様ら東部の魔術師どもは品がない・・・ドラゴンの足? はっ。あれはラーフェスウロンの赤き口というのだ」  スゥオードが軽蔑しきっているとでも言いたげに今や自らの身体となった半液状の身体を震わせて声を発する。今も人間の体を持っていれば、採掘鉱から出てきたゴブリンを見るような目でトーリンを見ていただろう。
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