天才魔術師トーリンの受難

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「あんたら北部連中の気取った呼び方なんてどうでもいい。あれは、相手を吹き飛ばすための魔術だ」 「それがどうした?」 「だが、あの土人形どもは吹き飛ぶどころか爆発した。つまり・・・」 「土人形ではないっ」  激しい怒りとともにスォードはその液状の体を大きく膨れ上がらせる。スゥオードが自分の生み出したゴーレムに執着しているのは明らかだった。怒りによって膨れ上がった分、潮が引くようにトーリンの体を締め付けていた部分が緩む。  その一瞬をトーリンは逃さなかった。片腕を土くれからわずかに覗いているその黒い水晶に向ける。 「フォルティプ」  呪文とともに小さな炎の円球が吸い込まれるように、すぐそばの土くれに戻りかけているゴーレム・・・正確にはそこに埋もれた黒水晶を包み込む。  トーリンが独自に研究した短音詠唱。本来四大魔術には長大な詠唱が必要なのだが、独自のある才能により、短音によって魔術の一部の再現が可能な事に気づいた。トーリンが天才魔術師と呼ばれる理由となった研究の一つだ。  黒水晶から放たれた膨大な光と熱が、スォードとトーリンの周囲を巻きこむ。  
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