天才魔術師トーリンの受難

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 ラ・フォルスト・デルーゼ・・・トーリンが呟くと同時に落としたポーションの中の魔法薬が呪文に反応する。  瓶の中の液体がまるで蛇のようにぐねぐねとうねりながら回転するとそこら中に飛び散っていく。  飛沫が飛び散るとその一滴一滴が、光や炎となってあたりに花火のように飛び散る。 「くそっ」  小さな罵倒とともに隠れていただろう本当の魔術師が放った魔術がトーリンの頭上をかすめる。  トーリンから逸れた緑色の閃光がジュっという音を立てて土人形にぶつかると土人形がよろめく。恐らくは痛み魔術だ。痛みという概念を緑色の閃光という形で相手に与える形意魔術。  痛覚のない土人形はよろめくという形でそれが現れる。  ペルネ・デルーゼ・ラプセル・・・相手を見る事無く呪文を唱えるとトーリンを襲ったのと同じ緑の閃光がトーリンの背後から閃光が来た方向へと飛ぶ。  避けるような衣擦れの音とバチリという音が聞こえる。恐らく木に当たったのだろう。魔術の全てはその音へと変換される。  トーリンが後ろを振り返り自分の魔術の効果を確認する暇はなかった。何故なら土人形の剛腕がトーリンを押しつぶそうと振り下ろされていたからだ。
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