天才魔術師トーリンの受難

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 轟音とともにあたりにめくれ上がった土が降り注ぐ。土人形の群れの中でも一際大きかったそれがその拳を地面から上げるとそこにはぺしゃんこになったトーリンが・・・いなかった。  ライ・ライ・ライ・・・トーリンが足場魔術を唱えるたびに空間に足場があらわれる。空中の足場に逃れたトーリンに土人形が跳びかかる。通常土人形はそれほど俊敏に動けるわけではない。戦闘用につくられたものも壁として使う事が多い。先ほどの適当な造形から相手を甘く見ていた事を反省する。  さっきの痛み魔術は土人形には効果が薄い。そうなると・・・ 「フォルティナー・ライプス・ロールファーティ・クルーゼンガラル・ライドア・・・」  トーリンが四大魔術の詠唱を唱える。土・火・水・風(魔術の流派によっては五大や六大。また、四大の中身が異なる事もある)を操る古来よりの魔術であり、比較的効果がわかりやすい反面、呪文象徴などが難しく、魔術音素も長く詠唱に長時間かかるなど扱いは難しい事が多い。  当然敵がこの隙を逃さない。飛び上がった土人形と銀色の稲光が同時に空中のトーリンに迫る。  舌打ちと同時にトーリンは呪文を唱えながら足場から自由落下する。銀色の稲光と土人形の拳が宙を切る。トーリンが落下するまでの時間に唱え終わるのは十分だった。最後の詠唱が終わると同時にそれがおこった。
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