天才魔術師トーリンの受難

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 最初に聞こえたのは凄まじい爆音だった。トーリンと土人形の間に突如金色の炎が噴き出し、呪文が現れた点を印した。  現れた炎の塊は稲光が走るように周囲の空気を膨れ上がらせると、衝撃となって土人形達を吹き飛ばす。  バラバラと土塊となった土人形達が崩れ落ちる。もうもうと上がる土煙から黒衣の魔術師が進み出てくる。魔術師が杖を素早く上げると、杖に引き上げられるように残った土人形達が立ち上がる。 「随分古臭い魔術を使うな」 「こういう時は焼くのに限るからな」 「その力で我が身を焼かねばよいがな」  魔術師の後ろに二体の土人形が付き従う。 (浅かったか)トーリンが二体の土人形に視線を走らせる。  四大魔術は扱いが難しく、その中でも炎の魔術は更に難しい。トーリンは恐らくライプスの呪文の部分の詠唱が弱すぎたのだろうと顎をさする。  「ドラゴンの足」(相手はドラゴンに蹴飛ばされたように吹っ飛ばされたり潰れたりするのでこう呼ばれる)と呼ばれるあの魔術はちょっとでも呪文を強く唱えると自分まで吹き飛ばされかねない。さっきも、かなり危なかった。トーリンは「ドラゴンの足」によってちぎれた自分の新緑のマントに無意識に目を移す。   
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