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気がつくと、日影 春樹は男に馬乗りになっていた。
手が焼けるように痛い。
アスファルトが血で真っ赤に染まっている。
近くに落ちていた鉄パイプにも、絵の具のような赤い何かがべっとりと付着していた。
直ぐ近くで女性の大きな悲鳴があがる。
女性の手にはピンクパールのネックレスが握られていた。
「きゃぁぁぁぁぁーー!!」
……俺は、何をしてるんだ?
馬乗りになっている男の顔が識別できないくらいぐちゃぐちゃだった。
一気に、現実へと引き戻される。
殺したのか、俺が…。
それほど遠くない距離からサイレンの音が聞こえてくる。
我に還ると、目の前の血だらけの男が憎くて堪らなかった。
死んでも尚こいつが憎い。
身体中の血がグツグツと沸騰している感覚。
許せない。
許せない許せない許せない許せない許せない許せない。
もう死んでいるのに、春樹は男を再度殴ろうとした。
震える拳を高くあげたと同時に。
春樹は後ろから羽交い締めにされ拘束された。
「何をしてるんだお前っ!!」
「離せぇぇーっ!!こいつがっ!こいつがぁぁぁぁぁーーーっっ!!!」
涙が溢れ出る。
…瑠花。
何人もの警官が春樹を押さえつけた。
「くそっ!!こいつ、なんて力だ!」
こんな奴に。
「ちきしょぉぉぉぉーっ!!」
「もうやめろっ!!」
「瑠花ぁぁぁーっ!!!」
瑠花は…。
殺されたんだ。
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