恋文2

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恋文2

 指南書には例文にとどまらず、心構えも記してありました。  恋文を渡す時には、なるべく人がいない時を見計らって、他の人に見せないようにと念押しをして渡しなさい。どうしても自分で渡せないなら、仲立ちを頼んでもいいけれど、本当に好きなら自分で渡しなさい。とあります。(そりゃそうだ!)  恋文を渡した後、当然次は、返事がもらえるかどうかの、ソワソワが始まります。    恋文を貰ったのが女性ならば、早速に承知の返事すべからず、とアドバイスしています。すぐにokしてしまうと、「情を失いて男の方にも楽しみ薄し」、簡単になびく女だと軽く見られ、相手方から向けられる恋情も、早くに失ってしまいかねないですよ、何より手紙を出した人の待つ楽しみが薄まりますよと言う事のようです。 返事の時点で恋の駆け引きが始まっているようです。    指南にそうあるのを読んでいる為か、すぐにお返事が無くても案外平気だったのかもしれません。それでも、ある程度待っても返事がないと、不安に駆られます。  こんな時にも、指南書は、女性は最初から付き合う気が無ければ、まず受け取らないので、受け取って貰えたならば脈ありですよと、励ましてくれています。  しかし、一方受け取る側が果たしてその心づもりかといえば、さにあらず。そこまで考える余裕もなく、勢いに押されて受け取ってしまう事も往々にしてあったようです。    差し出された勢いで受け取ってしまった。 文面は気になるけど、開封したらまたなんだか面倒くさいことにもなりそうだと思案、開けてみようか、どうしようかと何日もためらって、結局そのまま開封せずに返却する事もあったようで、「封じ目に手の垢つけて戻す文」 と、川柳にも歌われています。  返事が来て、喜んだのも束の間、広げて見れば、内容はお断りと言う事も。 こちらも残念( ;∀;)  手紙をそのまま返されたり、お断りの文が届いてしまうと、ガックリと萎れてしまいますが、指南書は、そんな時でも、もう諦めましょう、とはならず励ましてくれます。   十五、六歳、の乙女は恥ずかしがり屋なので、心の中と違う事を言ったり、一度は断るのが礼儀と思っているかもしれませんよ。断る理由がかいてあっても、それが本心とは限りませんよとアドバイス。  ほうほう、そういうものかと、しょげていた気持ちが少し上向くと、目に入るのは、断られたからといって、何の策も講じないでただ見てるだけですか?こうしてる間にも他の人の”いい人”になってもいいのですか?と、とどめの一文。  こんな事言われたら、良くない!と思っちゃいますよね。 さっきまでしょげていた人が、指南書を胸に当て、明るい方を見上げて拳を突き上げ、決意を新たにする姿が見えるようです(ง •̀_•́)ง‼ヨッシャ!  
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