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俄然やる気が出てきたところで、次の手です。
次に出す恋文は、ごく短い文にして、お相手の袂に放り込むよう勧めています。気持ちが重いと、引いてしまうのはいつの世も同じ。
返事がしやすいよう、軽い感じを醸し出しての、再チャレンジです。
それでも目の前で突き返されたならば、いよいよ脈無しです。と、ここで初めて諦めるようにと指南されています。
男性から女性に恋文を送った場合の事ですが、返事を催促してもくれないならば、いっそ抱きしめてしまえば、案外丸く収まるかもと乱暴な指南もあります。
お相手の女性が余りにも初心で彼を憎からず思っているんだけど、恥ずかしくてお返事出来ないと、分かっているならばともかく、それ以外だったら単なるセクハラだし、ストーカー。
肝の据わった女性なら、何すんだい!と頬の一つも張り倒せるでしょうが、江戸の女性は総じてその地位が低かったため、意思を軽んじられていた面も否めません。怖い思いをした娘さんもいたのではと、こればっかりは、心配になってしまう指南です。
指南書では、恋文の扱い方にも言及しています。
手紙は、個人情報満載です。うっかり落としてしまい、拾った人から謝礼を要求されることもあったようです。
そんな事もあり、なんにせよ、手紙は落とさないようにと注意しています。
落としてしまう事を想定し、初めまして好きです!と自分が惚れたような文面ではなく、相手から思われているような文面にしたり、先に相手から恋文が来たので、その返事を装って書いたりすれば良いと勧めています。
落とした場合はそれで何とかなるかもしれませんが、落とす事もなく、好きな人にちゃんと手渡せた場合、そんな恋文は、相当心証が悪いのではないでしょうか。女性からすれば、なんじゃこりゃ、だと思うんです。男性側だってそれは分かるはず。実践する人は、まず居なかったんじゃないでしょうか。
最悪居たとして、こういう心配性の人は口で言えば良かろうと思います。
また、色よいお返事がきて、お付き合いが始まったとしても、お相手が商家の箱入り娘ともなれば、親に内緒という事もあったでしょう。
逢瀬の日時が書いてある文を落としてしまっては、ゆすり、たかりの元になってしまいかねません。
そこで、拾われても、恋文だと分からないようにする方法も紹介してあります。
適当な文章を考えて、行頭にくる文字だけを横に読む方法(今で言う縦読みですね)、墨継といって和歌や俳句を書くときに、最初、三句、五句など、決められた句数で墨を含みなおす決まりを活用して、その句の前の文字だけを拾って読む方法等が紹介されていました。
確かに、これは教養がないと読み解けないですね。
恋の駆け引き、奮闘記でした。
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