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百物語
車座になって座の中心に脇差を置き、人数分の蝋燭を灯し、話し終わると吹き消していく。そして最後の蝋燭が吹き消されたその時、その場に怪異が現れる。とされる百物語では、それまでの時代に蓄積された様々な怪異が披露されました。その主流はやはり幽霊でしたが、妖狐、猫又(怪猫)も人気の話だったようです。
狐と猫のなるべく楽しそうなお話しを選んでみました。
【キツネ🦊】
老僧の元に遣いがやってきて、「女主人が是非お越し頂きたいと言っております」と告げた。老僧は喜んで話を請けた。
後から迎えに上がりますと遣いが消えると、老僧は、はやる気持ちを抑えつつ湯あみなどして身を清めてウキウキしながら待っていた。
立派な牛車で向かった先は、これまた見事な屋敷で、出てきた女主人は絶世の美女。老僧は女主人と契りを交わし、言われるがままその屋敷で暮らすことに。ふわふわと楽しい日を送っていたある日、数人の若い僧がずんずんと屋敷に向かってきた。すると屋敷にいた者達は慌てふためいて逃げ出してしまった。呆気に取られていた老僧は一人、土の上に座っている事に気付いた。周囲をぐるりと見回すと、立派だと思っていた屋敷は自分の寺の床下、御簾や畳と思っていたのは、むしろやこもきれ、美しい着物は襤褸切れであった。床下を塒とする狐に誑かされていたのであった。
若い僧の姿となり老僧を救ったのは、老僧が本尊とする地蔵であったという。
-異界と日本人よりー
【ネコ😸】
うららかな日和、誰もいない店先、縁台には猫が香箱をつくっているのみ。そこに一人の客が来て座り、煙管をふかしながら、「ああ、いい天気だなあ」と独り言。すると隣から、「全くだ」と返事があった。ぎょっとして猫を見ると、その猫が男をちろりと見て、
「あんまり気持ちよくて、つい喋ってしまった」と言うとまた目を閉じて寝てしまった。みればその尾は二つに分かれていたという。
-杉浦 日向子百物語より-
【ネコ😸】
寺の住職がお腹を壊し厠に行き、部屋に戻ろうとしたその時、縁側の潜り戸から、「これこれ」と声がした。
すると、コタツの上でまるくなっていた飼って7,8年になる猫が、走って縁側まで行くと、戸の掛け金を物慣れた手つきで開けた。
顔を覗かせたのは一匹の大猫。
「これから盆踊りの会がある。一緒に行こう思うて、誘いにきたんや」と言う。
「それがな、ここんとこの和尚さん、腹具合が悪うて看病せなあかんから」
飼い猫がそう断ると
「しゃあないな、それなら手ぬぐい貸してんか」大猫が頼むと
「手ぬぐいは和尚さんのやから勝手に貸されへん、すまんけどなぁ」
飼い猫が断る。
話が終わり、大猫を送り出した飼い猫は、また掛け金をかけ直すと、コタツに戻りその上で丸くなった。
一部始終を見届けた住職は部屋に入ると、コタツの上の猫を撫でながら
「わしの心配ならせんでも構わん、早くお前も踊りに行くが良い、手ぬぐいもやるぞ」
そう話しかけてやった。それを聞いた猫はその場から走り去り、再び戻ってくる事は無かったという。-怪の壺より-
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