江戸の化粧(洗顔・化粧水)

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江戸の化粧(洗顔・化粧水)

【洗顔】 普段は小麦のふすま(外皮)や小糠等使う事が多かったようですが、脂ぎった顔や手を洗うには、小豆や緑豆の粉が「脂や垢を取り去るに甚だ良し」とされていました。 因みに、衣服は、灰を利用した灰汁や、無患子(むくろじ)の外皮を利用して洗濯していました。 【化粧水】 ーへちま水ー へちま水は旧暦八月の、十五夜に取るのが良いとされていました。 蔦を根元から30~60㎝くらいで切って、根のある方の蔦の切り口を徳利などに入れておきます。吸い上げる量は一晩で約2リットルにもなるといいます。へちまにはビタミンCが豊富で、抗炎症作用があり、皮膚に透明感を与える効果があるそうです。 ー菊の着せ綿ー 平安時代から続くもので、化粧水というより、縁起物です。 九月九日の重陽の節句の前日、菊の花に真綿を被せておきます。露と菊の花の香りが移った綿で顔を拭くと老いが去り、長命になると言われています。 個人的に是非とも欲しい一品です(笑) ー花の露ー 神田門前町にあった林喜左衛門からのれん分けされた、宇田川町、京橋南三丁目、新橋竹川町で販売されていたノイバラエキス配合の化粧水です。 火鉢にかけた、蘭引(らんびき)という三段重ねの陶器の蒸留器で作られていました。 「ランビキ」で検索していただくと写真が出てきますので、お時間とご興味がおありでしたら是非ともご覧くださいませ。 文字で説明しようとして・・・・・・固まりました。難しい。ちょっと何言ってるのか分からないかもしれませんが、頑張ります! まず涙滴型のフラスコを思い描いてくだされ。 それを丸い所と首でスパンと二つに分けます。下の丸いところが下段です。 更に、首部分を二等分します。 下を二段目、口に近い部分を上段とします。 (二段目、上段には薬缶のような注ぎ口が作られています) 一番下の器でたっぷりの湯を沸かし、二段目の器に入れたノイバラを温めます。ノイバラの成分を含んだ水蒸気が、上段器に入れられた水により冷やされ、二段目に作られている注ぎ口から出て来る仕組みです。(上段の水は湯になる度、水に差し替えます) 同じ要領で、二段目に、丁子(抗炎症作用)、片脳(防腐効果)、白檀(香り)を合わせ入れ蒸留したものを、ノイバラ水に少量加えて完成です。 このほか、「江戸の水」、「菊の水」、も発売され人気を博しましたが、内容は、ほぼ同じようです。 ー江戸の水ー 「浮世風呂」(文化9年1812年)「浮世床」(文化10年1813年)などの戯作者にして、百種類以上の薬を発明発売して成功している生薬屋でもあった式亭三馬が、”白粉のはげぬ水”とうたい売り出した化粧水です。 三馬は中々のやり手だったようで、ケース代である桐箱6文、ガラス瓶6文(72円)と仕入れ値を抑え、そこでも儲けていたようです。 硝子瓶入りを桐の箱にいれたものが48文(576円)、大きい瓶に入ったものが200文(2,400円)で販売されていました。ケース代が馬鹿になりませんが、それでもオシャレなパッケージに胸躍らせて多くの女性が求め、”愛嬌のこぼれる(かお)へ江戸の水”と川柳にもよまれるほどでした。 花の露、江戸の水、菊の水は、スキンケアではなく、メイク崩れを防ぐために使われました。 顔に塗ったおしろいが長持ちするように、手ぬぐいに浸したものを、目じり、口もとなどを中心に、そっと押さえるように使われました。また、少し拭う事により、濃淡が出来て顔に陰影をつくる効果もありました。 ※1文は12円で換算しています。蕎麦1杯16文(192円)の時代です。
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