お歯黒(鉄漿付け)1

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お歯黒(鉄漿付け)1

お歯黒は毎日塗るのを定例として、二日に一度は中、三日に一度は下、それ以下は無嗜(ぶたしな)みと言われてしまったようです。 岡場所や、芸者は眉も剃らず、鉄漿(かね)付けもせず白歯のままでしたが、吉原の遊女だけは、眉は剃らずとも、鉄漿付けはしていました。行商が壺に鉄漿を入れて売りに来ます。茶碗一杯1文(12円)で売られており、それを自費で購入していました。格上遊女は払えなくはない金額ですが、切り見世で(1回100文(1200円))しかも客のつかない遊女には例え1文でもきつかったのではないかなと思います。 新吉原を囲むどぶは、遊女たちがお歯黒を捨てた為、「お歯黒どぶ」と呼ばれるようになったと言われています。(いずれにせよ汚水の”どぶ”で、その深さは約160㎝、跳ね橋は常時上げられ、遊女の逃亡を防ぐものでした) 黒は変色する事が無い色で、心がわりの無い色、貞女の色、とされていました。今では結婚式で白無垢や白いウエディングドレスを着ますが、江戸時代は黒紋付がその衣装でした。 又、鉄漿に含まれるタンニンは虫歯予防効果があります。懐妊後の悪阻で虫歯になるのを防ぎ、結果的に出産時に歯を食いしばる力で歯がボロボロになるのを防いだとも言われています。 【鉄漿の作り方】 ①古い鉄、釘を探してくる。 ②器に①と米屑を少しばかりいれて水を注ぎ漬けておく。 ③夏は三日、冬は七日、暖かい場所に置いておくと黄赤色の鉄汁(鉄漿)になる。味は少し塩辛くわずかに甘い。 ④五倍子(ぶし)の粉(ヌルデの葉に出来る虫瘤(咳止め、消炎、皮膚炎にもなる))を房楊枝で歯に塗る(渋い) ⑤鉄漿を塗りつける。 ⑥④と⑤と何度も繰り返す。 ⑦ぶくぶくと口中を濯ぎ、黒い水が出なくなったら完成。 最終的なお歯黒の味は、一言で言うなら”酸っぱい”そうです。 角状の取っ手が二本づつ付いた角盥、両方に取っ手のある耳盥など、室内用の洗面道具を使っていました。
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