お歯黒(鉄漿付け)2

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お歯黒(鉄漿付け)2

7f75d2a3-855f-41a6-a4cf-a52cb0baaee1 古代江戸繪集 国立国会図書館デジタルコレクション所蔵 足元に耳盥があります。 鉄漿付けは、竃の一角を使い鉄漿を温めて、耳盥に張った水に漬けて適温にしたあと、手早くつけていきます。歯磨きを、さらにアクティブにした感じの、もの凄い形相になるため、家人より少し早く起き、誰にも見られないようにしていました。 上の絵は、歯の隙間を洗ってる様にも見えますが、鏡を覗かず、房楊枝の反対側をきつく噛んで焦れているようにも見えます。 この女性も火鉢の上に鉄漿を乗せた後、温まるのを待っているのかもしれません。 「座ってなんて悠長なことできやしないよ、ああじれったい、あの人が起きてきちまう」なんて、じれじれしてるのかもしれませんね。 【言い伝え】 鉄漿付けした後、ホウレン草を食べると、血を吐いて死ぬという怖い言い伝えもありました。お歯黒初心者には周りの女性から 「いいかい、お歯黒した日はホウレン草食べちゃダメだからね!」と伝えられていたそうです。 鉄漿も、より滑らかに艶やかにしたいと、燗冷まし、塩、飴など入れカスタマイズされていました。 びっくりするのがタバコの吸い殻、更に驚くのが、無褌(むふん)の男性に壺をまたいで貰うというおまじない。 首を傾げ倒しますが、結構本気で信じられていたようです。 男性不在の時は、紙に”へのこ”の絵を描いて壺に貼っていたそうです。 呪いのへのこが利いて歯が染まり え~本当に~?と思っちゃう川柳です。 これも最初は何か委細があったんだろうけど、姫初めのように、形骸化したんではないかと思います。「なんでだか知らないけど、言い伝えだから、本当なんだろう」と信じて疑わない江戸の人の気質。おおらかで面白いなあと思います。
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