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「父上!」
ガキィィン…
「ほう、若造が歯向かうか!面白い、どこまでやれるか余と競ってみるか?」
「臨むところだ、悪魔よ!うぉぉぉぉぉ!」
「カイン、陣形を乱すな!」
「やらせてください、父上!私はあの者に見せたいのです…自分の力で悪を討つところを!」
「………無理はするな。全軍、再び陣形を整えつつ、進軍!良いな…犠牲は極力抑えるのだ!」
カインは盾にしまってある剣を取りだし、ウヴァーに向けて構えた。
「行くぞ、若造!」
ウヴァーは天魔族の中でもずば抜けて戦闘慣れしている古参の類いの者で、重装でどうすれば速く動けるかを熟知していた。
その上、自身が使う武器種の長短所を全て把握・対策しているため、これまでに彼に決定打を与えた者はいなかった。
「はぁぁぁっ!」「ぬぅん!」
カインの剣はウヴァーの槍に軽々とはね飛ばされてしまった。単純にカインが勢いよく振り下ろしたのをウヴァーは槍をただ前に構えるだけだったので、重量とスピードの関係でこうなった。
カインはその弾みで後ろへ大きく後ずさりしてしまった。
「ハハハ…軽い!緩い!甘いわぁ!その程度では鎧にすら近づけぬぞ!」
「黙れぇぇ!私は誇り高きディヴァインス王国の王子カインだ!神と友情を育み、剣技に勤しんだ者だ!ここで折れるわけにはいかんのだぁ!」
カインは何度も同じ攻撃を仕掛け、同じようにはね飛ばされた。
「つまらぬ遊びは他所でやれ!」ブゥン…
「がっ……はっ!」
カインはウヴァーの槍に横殴りにされ、壁に激突してめり込んだ。
その際、槍の一撃が首筋に入ってしまったことで気絶してしまった。
「口程でもなかったか…哀れな小僧よ、悪魔に向ける剣は殺意を込めねば意味がないのが現実だ。」
ルドラス、君の力が欲しいよ。私は無力だ、どうしようもなく…無力だ。一国の王子だからと舞い上がった罰なのか…これは。私では、悪に天誅を下せないというのか。
父上、こんな私を…許してください。身勝手な…私を。
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