第四話 可もなく不可もなく……

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 星合高等学校、一年B組の昼休み。仲良くなったもの同士、各自持参したランチを手に机を移動させる。真凛は慣れたように窓側の一番後ろに自分の机ろ椅子を移動させた。そして母親が作ってくれた弁当を出し、静かに食べ始める。  一時間目はホー ムルームの時間で。担任を始めクラス全員の自己紹介と日直の仕事の説明などだった。担任は古典教師。穏やかで優しそうな中年男性で北條憲和(ほうじょうのりかず)と言った。  自己紹介ははっきり言って真凛が最も苦手な時間だった。皆生き生きと自己紹介をするのに、真凛にはアピールすべき部分が何もなかったからだ。  自分の番がやってきて俯きながら立ち、フルネームで名前を述べて小学校三年くらいの時から使っている台詞述べる。順番が近づくに連れて全身が脈打ち、ガチガチに緊張していてもスッと冷水を浴びたように冷めていく。誰も自分に興味など持ってないという事が、シーンと静まり返った雰囲気で嫌でも悟るからだ。殆どの人が、他から質問を受けたりして多少なりとも盛り上がるのに……。  静かな中話すのは、声が小さくても響き易いのは有り難かったけれど。尤も、気にするには及ばない。どうせ自己紹介が終わった後は、すぐに忘れ去られてしまうのだから。 (小学校、中学校と同じパターンか。進歩ないなぁ)  内心で苦笑しつつも、その内どこかから声がかかる事を予感していた。これは長年の経験による直感である。月曜日、今日が高校の新学期初日だ。一人ぽつねんと弁当を食べている真凛に、数グループの女子がコソコソ何かを言い始めた。 (ほら、来た……)  真凛は予感した。二人の女子が真凛に近づいて来る。 (案の定……)  苦笑したくなるのを堪え、何も気づかないふりをして静かに待つ。 「あの、久川さん、良かったら一緒に食べない?」  背が高く、良く日焼けしたキュートな顔立ちの女子が話しかける。フサフサの鳶色の髪を惜しげもなくショートカットにしており、それがとてもよく似合っている。 「おいでよ」  親し気な笑顔を向けて誘うのは、色白でふっくらとした小柄で可愛らしい少女だった。 「いいの? 嬉しい。有難う」 (凄い! 一時間目のホームルームの時間の自己紹介で名前覚えてくれたなんて! こう言うパターンは、声をかけてくれた子たちは皆遠慮がちに『えっと、覚えてなくてごめんね、お名前は……』と聞いてくるパターンばかりだったのに)
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