BlackRose[貴方は私のもの]

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「伊織さん、ここは?」 「オフィスと奥はプライベートルーム。今日はもう誰もいませんから、ゆっくりして」 夕刻に退出したばかりのマイオフィスに沙羅を連れて行く。  酒や食事という雰囲気でも無い。ここなら少しは落ち着けるだろう。 「大丈夫? そんなにショックでしたか」 「伊織さん……」  まるでガラス細工のような女性(ひと)  ふれたら壊れてしまいそうだ―― 「沙羅さん、何かがあるなら話して下さい」 結弦との結婚を考え直すには、もっと別の理由がある気がした。父に反対をされたからだけとは思えない。    私を見ないでください―― 沙羅は唇を噛み締めてぎゅっと目を閉じる。
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