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そっか、って來斗はまたグラスに手を伸ばす。一気に呑み干すとカランと氷が音を立てた。
來斗の様子がどこかいつもと違うみたい。
「紗羅、さっきの誰?」
結弦に送ってもらった姿を見られていたみたい。
「彼氏?」
「ん――」
來斗の眼差し。それはいつも優しく私に向くのに。
「門限は守れよ」
「來兄……?」
來斗の腕がすっと伸びる。髪を撫でる指先。端正な顔立ち。私には見せない男の人の表情にドキッとしてしまう。
「向こう、戻るかな」
浅い溜息が吐かれて來斗はリビングを出て行く。
びっくりした。來斗の指先が髪に触れてた。
水波 來斗
血の繋がらない兄が好き――
叶えられない恋をした。だから、私は結婚を承諾したの。愛してると嘘をついて。
ここから始まるなんて、まだ何も知らずに。
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