WhiteRose [純潔]

5/11
前へ
/245ページ
次へ
 そっか、って來斗はまたグラスに手を伸ばす。一気に呑み干すとカランと氷が音を立てた。    來斗の様子がどこかいつもと違うみたい。 「紗羅、さっきの誰?」 結弦に送ってもらった姿を見られていたみたい。 「彼氏?」   「ん――」  來斗の眼差し。それはいつも優しく私に向くのに。 「門限は守れよ」  「來兄……?」  來斗の腕がすっと伸びる。髪を撫でる指先。端正な顔立ち。私には見せない男の人の表情にドキッとしてしまう。 「向こう、戻るかな」  浅い溜息が吐かれて來斗はリビングを出て行く。  びっくりした。來斗の指先が髪に触れてた。  水波 來斗(みなみ らいと)  血の繋がらない兄が好き――   叶えられない恋をした。だから、私は結婚を承諾したの。愛してると嘘をついて。    ここから始まるなんて、まだ何も知らずに。
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1479人が本棚に入れています
本棚に追加