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鍵を掛け忘れたのかな。扉は開いていて中へと入った。細めの通路の先にリビング。通路の片側にプライベートルーム。
「來兄、どこ?」
あ、寝ちゃってる。リビングのソファに横たわる來斗の姿を見つけた。
「來兄?」
長いまつ毛は伏せられたまま動かない。顔に近付いて声を掛けても起きそうになくて。
「來兄、起きて」
ほっぺたにつんつんとしてみたり。
お酒呑んでいたから、すっかり寝入っちゃってる。起こすのは諦めて、來斗の顔の横に座り込む。
綺麗な顔――
『お兄ちゃんよ』幼かった少女時代、突然できた新しい家族。威圧感のある父親に馴染めずにいた私に、來斗はいつも笑い掛けてくれてた。
お兄ちゃんじゃなかったらよかったのに。
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