WhiteRose [純潔]

8/11
前へ
/245ページ
次へ
 來斗が兄じゃなかったら。  そっと指先を伸ばす。頬をなぞってもやっぱり起きない。一度だけ。触れてみたい衝動が湧き上がる。指先で來斗の唇をなぞる。 「ん……」 僅かに漏れた來斗の声に、はっとした。やだ、私何をしてるの。   來斗にふれたい、でも許されない。いつか來斗の隣にも素敵な女性が並ぶ。早く家を出て行きたい。  そんな來斗は見たくないもの。 「おやすみなさい、來兄」  近くにあったブランケットを掛ける。リビングの明かりを落とす。  薄明かりの中、扉の方へ向かおうとして。 「きゃ……っ!」    入口付近に置かれた物に躓いて派手に転んだ。バタンと大きな音を立てて、旅行用のキャリーケースが床に倒れる。  「紗羅……?」 
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1479人が本棚に入れています
本棚に追加