1463人が本棚に入れています
本棚に追加
/245ページ
BlackRose[貴方は私のもの]
【side_伊織】
追いかけた沙羅は今にも崩れ落ちそうな危うい瞳をしていた。
「本当に一人で大丈夫ですから」
作り笑いが俺に向く。
「泣いているようにしか見えません」
俺と來斗が兄弟だという事実を、沙羅は受け止めきれていない。結弦との結婚に支障があるせいだと思っていた。
「あの、駅で……」
「家まで送りますよ?」
とにかく車へと沙羅を乗せた後で、沙羅は行き先を告げてきた。
「もしかして帰りたくない?」
來斗にまだ―― 会えません。
紗羅の中にある想いに俺はまだ気が付けない。
「少し寄り道をしましょうか」
泣き出しそうな沙羅を放ってはおけなかった。
最初のコメントを投稿しよう!