絆のはじまり

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絆のはじまり

出会ったころは、こんな気持ちになるなんて、思いもしなかった 「なにしてるの?」 その出会いは、あまりに唐突だった 平日の夕方、公園のベンチに座って、縫い物をしていた私に 声をかけてきたのは、小学生くらいの男の子だった 私は、結婚して子供を産むどころか、友人のひとりもできないまま、ここまで生きてきた そんなおばあさんのなにに興味があるのか 男の子は私の隣に座って、私の手元をのぞきこんできた 「これ、なにつくってるの?」 「…人形の服だよ」 「僕にも教えて!」 針を使うのは危ないからと言うと、男の子はおとなしく座って、 キラキラした目で私の手元を眺めていた あすかと名乗ったその子は、その日から夕方になると、公園に現れるようになった 「あやとりやろう!」 「今日はお菓子もってきたよ」 なんで私なんだろう ここには、彼と同い年の子もたくさんいるのに… 同年代の子には目もくれず、こちらへ駆けてくるあすかが、初めは不思議で たまらなかった でも一緒に本を読んだり、折り紙を教えてやったり、そうして何度か会ううちに 気づけば、あすかが隣にいるのが当たり前になっていた そんなある日、私はふいに不安になって、前から気になっていたことを訊いてみた 「いつも私の相手をしてくれるのは、嬉しいけど、友達と遊ばなくていいのかい?」 「いいの。僕はここにいるほうが楽しいから、それに僕たちもう友達でしょ」 なんでもないことのように告げられたその言葉は、 臆病になっていた私の心をそっとすくいあげてくれた あぁ、“友達”ってのはいいもんだね。
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